焚き火のことを語る時、よく「人類のDNAに埋め込まれているから癒されるんだ」という話がされる。
ぼくはこの類の話はあまり信じていない。
1万年前の人類と今の人類に共通点があるという考え方には夢があるが、実際には確かめようがないし、DNAに焚き火文化にまつわる情報が埋め込まれているとは考えにくいからだ。
では「焚き火に当たると癒される」という魅力はどう説明すればいいのか。
ぼくは「焚き火は最高のマインドフルネスの道具だからだ」と答える。
焚き火は味覚以外の全ての感覚を使う
焚き火に当たるときを想像してほしい。
赤い炎がゆらゆらと生き物のように揺らめき、同時に「パチパチ」と薪や炭が爆ぜる音が心地よく耳に響く。
周囲には煙の芳しい香りが漂い、寒い夜でも火が手足を芯から温めてくれる。
このように、焚き火は五感のうち味覚以外の全ての感覚を用いる。
これはマインドフルネスには不可欠の要素だ。
マインドフルネスな状態というのは、「今、ここ」の自分や周囲の状況に意識を向けられている状態だ。
マインドフルネスな状態になるには、自分の感覚に意識を集中させることが重要だ。
なぜなら、その瞬間に感じる自分の感覚は、まさに「今、ここ」で感じていることだからだ。
そのため、マインドフルネスのワークショップなどでは、例えば呼吸に、また例えば自分の身体が発する声に耳を傾ける方法が一般的に行われる。
ぼくが以前参加した、Google社員も取り入れているSearch Inside Yourselfのプログラムもそうだった。
でもこれが以外と難しい。
人はすぐあれやこれやと考えを巡らせてしまう。
思考は過去・未来志向なので、「今、ここ」から離れてしまうのだ。
しかし焚き火をすると、簡単にマインドフルネスの状態に入ることができる。
前述のように、焚き火は味覚以外の五感を全部使う。
だから、何もないときと比較して、自分の感覚に集中しやすい。
誰でも苦労せずに「今、ここ」に集中しやすくなるのだ。
そしてマインドフルネスの状態の特徴は、非常にリラックスできるという点にある。
他にいいサイトがたくさんあるのでここでは詳しくは説明しないが、「今、ここ」に集中できることによって、身体のリズムが整い、それが心にまでいい影響を及ぼす。
これが焚き火の癒し効果の本質だと、ぼくは思っている。
ストレスが溜まった現代人を全員焚き火に連れて行ったら、かなりの割合の人たちが元気になって帰ってくるんじゃないかと本気で思う。
焚き火は世直しの道具になり得ると思う。
ちなみに、ぼくが使っている焚き火台はpicogrill 398。
参考:http://wanderlust-equipment.com/products/picogrill-398/
スイスSTC社製で、あり得ないほどの軽量さと使いやすさの両立で一世を風靡した焚き火台だ。
見た目も芸術作品のように美しい。
独身の頃はソロキャンプで使い倒し、結婚した今も現役でバリバリ使っている。
焚き火台に悩んでいる人がいたら、真っ先に進めたい一品である。
ではでは。